行為と倫理(6)

倫理の説明[アリストテレスの考え] アリストテレスの倫理や道徳についての研究は主に『ニコマコス倫理学』において展開されている。彼の倫理に関する研究の出発点は「幸福は何か」という問いである。倫理は人間の主要目的、最高善を見出すための試みであり…

行為と倫理(5)

自由の存在 [自由と決定の両立] 「心的因果は随伴現象に過ぎない」という命題は何を意味しているのか。狭い物理主義と広い物理主義の違いは還元に対する寛容性の違いであった。「心的因果は随伴現象に過ぎない」ことは狭い物理主義において成立する命題で…

深川怪談序段

怪談となればイギリス人がすこぶる好きだと聞くが、江戸の人たちも怪談好きが多く、結構な人気を博していたようだ。小泉八雲の『怪談』よりもっとずっとおどろおどろしく、しかも人間的なのが歌舞伎や落語の怪談物。 そんな怪談に縁もゆかりもある神社が深川…

行為と倫理(4)

選択と決断:指令関係 私たちは部屋の状態を表象し、そこから、部屋が汚いので掃除をしよう、部屋が寒いので暖房を入れようといったことを考える。掃除をする、暖房を入れるという行為を生み出すまでの思考は、心理的に実行される目的的な系列である。それは…

霊巌寺

江戸深川資料館に立ち寄り、久しぶりに隣の霊巌寺を訪ねた。江東区の白河、三好には寺が密集しているが、その親分格が霊巌寺。霊巌寺は寛永元年(1624)、雄誉霊巌上人の開山によって、霊巌島(現在の中央区新川)に創建された。明暦3年(1657)、江戸の大半…

朝日と夕日の区別

朝日と夕日の区別ができないことは知覚が信頼できない証拠だ、と言われてきたが、果たして承服できるだろうか。素直に「知覚は信頼できない」と叫ぶより、朝日と夕日の違いを知覚像だけから見つけることは愚行だと考える手もある。実際、日常の生活で人は利…

行為と倫理(3)

自由と決定[問題の解決を目指して] ここでは、自由と決定の問題に対して、今まで何度か説明してきた幾つかの概念を使って一つの解決を試みてみよう。ただ、以下の解決はあくまで一つの例であって、決定的な解決には程遠いことを承知しておいてほしい。 心…

広い物理主義(行為と倫理に向けて)

「心的な性質は物理的性質に付随する」という付随性テーゼを既に述べた。付随関係は曖昧な概念で、関数関係のような明晰判明さがない。その欠点には眼をつぶって付随関係を使って見よう。これを使うと、物理学以外で扱われるすべての性質は物理的な性質に付…

イロハモミジ

イロハモミジは、カエデの一種でイロハカエデとも呼ばれる。日本ではとてもポピュラーで、紅葉の代表選手。その紅葉が関東では今が旬。

コブシの幹

シラカバやユーカリの幹の白さについて数日前に記した。シラカバやユーカリほど白くはないが、グレーで白に近いのがコブシの樹の幹。コブシはモクレンの仲間だが、私にはモクレンの幹と比べてコブシの幹の方がずっと白いように感じる。だから、シラカバやユ…

模写と本物  「構図と内容(広重、マッハ、マグリット)」

「構図と内容(広重、マッハ、マグリット)」で四枚の絵、ルネ・マグリットの「ステフィー・ランギの肖像」、「大家族」、エルンスト・マッハの自画像と「深川洲崎十万坪」と比べてみて、構図と内容からそれぞれ似ていることを述べた。模写は意図的に似せる…

行為と倫理(2)

自由と決定を巡って[自由意志を巡る混乱] 自由意志の存在と振舞いはどのように考えられているのか。次の自由意志についての特徴付けの例を考えてみよう。既に述べたように行為や倫理の議論では多くのことが事前に仮定され、それら仮定を認めた上での議論に…

構図と内容(広重、マッハ、マグリット)

広重の名所江戸百景の「深川洲崎十万坪」(今日の「江戸前の海」参照)は私の好きな一枚です。ずいぶん前になりますが、ルネ・マグリットの「ステフィー・ランギの肖像」(1961)を紹介したことがあります。また、例えば彼の「大家族」(1963)と比べてみる…

江戸前の海

「時は違えど、心象風景には相通じるものがある」とつい納得してしまう画像である。冬の東京湾は寒く、侘しい。江戸の初めから埋め立てが行われ、陸地が増えた。だが、それも俯瞰すれば些細な拡大に過ぎなく、相変わらず海は広く大きい。 (歌川広重「名所江…

現象や仮象、実在や物自体

(現象も仮象も、そして彼岸のものも遺物と紙一重で、心して捉えるべき概念ではないという寓話) 彼岸でも此岸でも「仮象(Schein)」とは架空のもの、フィクション、創作のことです。偽物であって実在しなくても、文学作品の中の仮象は有意味で、必要だと思…

行為と倫理(1)

行為の因果連関[心が関与する行為] 心とは原理上何であるかを主張することと、心の具体的な性質や現象を実際に追求することは同じではない。遺伝子の基本的な仕組みがわかれば、そのことによって、その遺伝子をもつ生物個体の行動がすぐにわかるものではな…

行為と倫理

「不十分な証拠に基づいて何かを信じることは正しくない」 この主張はもっともで、誤っているようには見えない。私たちは人間や社会について十分な知識をもっていない。だから、より多くの知識を求め、十分にしようと躍起になる。そして、その知識と経験的な…

晩秋

地球温暖化のためか、都内の銀杏はようやく黄葉というところだが、それでも晩秋の最後の頃ともなると、桜の木など裸になった枝が目立ちだす。以前晴海のトリトンスクエアの緑の壁面を紹介したが、その壁もすっかり晩秋の姿になってきた。晩秋は地上も屋上も…

菊の秋

公式ではないが、日本の国花は桜と菊。春の桜に対して秋を象徴するのが菊。鎌倉時代の初めに後鳥羽上皇が菊の花を好み、「菊紋」を皇室の家紋としたことが菊が好まれる第一歩だった。それ以来、菊は高貴な花ということになった。誰かが『菊と刀』を書いたが…

消去的唯物論と常識心理学

「心の状態や過程は脳の状態や過程である」という主張は心についての唯物論である。これがチャーチランドの立場で、心的なものは物理的なものに還元でき、したがって、心は存在しない、消去されるべきものである、というのがその主張である。彼の立場は神経…

シラカバとユーカリの幹の白色:HowとWhyの創作  

シラカバの樹皮は外樹皮と内樹皮とがあり、白く見えるのは外樹皮。外樹皮は主成分の「ベチュリン」というトリテルペン化合物を約70%も含む。シラカバが白く見えるのは外樹皮に多量のベチュリンが含まれるためで、ダケカンバ、ウダイカンバなど、ベチュリン…

意識(4)

感覚質(Qualia) 私たちの感覚や経験はさまざまである。そのような感覚や経験をもつのは私であり、私がある経験をもつ状態(であるようなもの)が存在する。私たちは自らの心的生活の、内観的に知ることのできる現象的な側面を「感覚質」と呼んできた。この…

タワークレーン(2)

晴海に建築中のタワーマンションのタワークレーン3基。いずれもビルの外側に設置されている。50階ほどの建物ということだから、直にクレーンをもっと高くしなければならないだろう。 タワークレーンのお蔭で高層ビルが次々に建築できるようになった。湾岸地…

タワークレーン

2020年に向けてあちこちで工事が始まり、空を見上げればクレーンだらけ。画像は経済特区を活用したマンションと商業施設の「夜明けの」建設現場で、タワークレーンの林立は壮観そのもの。 クレーンについての子供じみた謎となれば、「高層ビル屋上のクレーン…

意識(3)

ジャクソン(Frank Jackson)の反物理主義的な論証:知識論証(The Knowledge Argument)(F. Jackson, ‘What Mary Didn’t Know’, Journal of Philosophy, 83, 1986, 291-5.) 私たちはバラが赤いと思うし、その赤さを感じることができると思っている。つま…

三葉の秋

それぞれ三葉の秋は、緑葉、紅葉、黄葉の、いずれも暫しの色のうつろい。

意識(2)

ある心的状態が意識的であるとは、そのような状態であるような何かがあることである。黄色を見るとはどのようなことかを人は知っている。このような言葉遣いを使ってネーゲルは、世界についての純粋に物理主義的な説明によってはできない、何かを経験すると…

壁画の続く旧護岸

隅田川テラスに描かれているのが落書きなのかアートなのか文句をつけたが、江東区の古石場にアートと胸を張れる壁画が並んでいる。古石場川護岸ギャラリーである。古石場川親水公園の水路は海水で、潮の満ち引きで水量が変わる。周りは整備され、牡丹やバラ…

意識(1)

[フロイトの意識、無意識] フロイト(Gigmund Freud)に何か神秘的な魅力を感じる人はどこにその魅力を感じるのだろうか。彼は生理学者、医者、心理学者であり、なにより精神分析の産みの親である。彼は心が複雑なエネルギーシステムであり、その構造的な…

続富士塚

富士山信仰は典型的なアニミズムで、ミニチュアの富士塚は富士山のモデルです。日本には古来から、精霊、霊魂、神様が自然の中に宿るというアニミズムの思想がありました。これが八百万の神々。アニミズムは自然を神と見做し、自然に文化を加えた最初の宗教…