量子力学のコペンハーゲン解釈

 コペンハーゲンはボーア(Niels Bohr, 1885-1962)の住んでいた街。それに因んでボーアの考えた量子力学の解釈はコペンハーゲン解釈と呼ばれてきた。20世紀には大半の物理学者がそれが最善の説明だと受け入れた。だが、アインシュタインはボーアの解釈に強く反対した。二人の間での長年の論争は、ボーアが勝ち、その結果、コペンハーゲン解釈は正統と見做された。では、このコペンハーゲン解釈の内容は?

1. 量子レベルで何が起こっているかを説明するより深い理論はない。
2. 量子的な世界では測定がなされるまではどんな事実もない。
3. 量子的なシステムについて二つの相補的な性質の値を同時に知ることはできない。
4. 量子的な世界は確率的である。

これらを、より哲学的に次のように言い直すことができる。

1. 量子力学は「道具主義的」である。それを使ってできるのは予測だけであり、何があるか、何が生じているかはわからない。
2. 量子力学は「実証主義的」である。測定によって真偽がわかるときだけ、命題の真偽を知ることができる。
3. 量子力学は「操作主義的」である。与えられた実験で測定できるものに対してだけ値を考えることができる。
4. 量子力学は「非決定論的」である。測定結果を予測できない。

 このようなコペンハーゲン解釈に対して、次の疑問が出てくる。

ハイゼンベルクの「不確定性原理」は実在それ自体の「鮮明さ」に対する制限なのか、それとも、私たちが実在について知ることができるものについての「鮮明さ」に対する制限なのか。

 この問いは「量子的な記述は完全か、それとも、記述されない実在の「隠れた」側面があるのか」という問いと本質的に同じである。コペンハーゲン解釈の解答は「量子力学は完全であり、不確定性原理は量子的な実在それ自体の鮮明さへの制限である」というものだった。この解答に反対する代表がアインシュタインシュレーディンガー、ボルンらも)で、彼は「量子力学的な記述は不完全だ」と考えた。では、いずれの見解が正しいのか。いずれに対してもそれぞれ反対の主張があり、そのため、量子力学の解釈問題が重要となってきたのである。
 測定によって起こる量子的な状態関数の「崩壊」は次のように解釈が分かれる。

(1) 世界自体の実在的な変化なのか、それとも、
(2) 世界についての私たちの知識の変化に過ぎないのか。

(2)が正しければ、量子状態は完全な記述ではない。というのも、測定によって既に真である実在の何かがわかるのであれば、それは量子状態によって与えられていた情報には含まれていなかったからである。
 量子力学を真剣に考える哲学者や物理学者の間での現在の有力な意見は、コペンハーゲン解釈は長い間物理学のこの分野での進展を拒んできたというもので、現在では別の様々な解釈が自由に、そして真剣に考えられるようになってきた。