「EPRの論証」の最短要約

 「量子力学は世界の完全な記述である」というボーアらの見解に対する反論が1935年に出された。それは後にEPREPRという名称は1935年にAlbert Einstein、Nathan Rosen、Boris Podolskyが書いた論文‘Can quantum-mechanical description of physical reality be considered complete?’, Physical Review 41, 777, 1935.に由来し、著者3名の頭文字を取ったもの)と呼ばれ、20世紀後半に関心をもたれることになる。実在それ自体の鮮明さへの制限としての不確定性原理は「粒子は同時に正確な位置と正確な運動量をもつことができない」という実在論的な主張をする。このコペンハーゲン解釈に対して、EPR不確定性原理が成立せず、量子力学では記述されない「隠れた変数」があると主張する。

 EPRの論証は二つの重要な仮定に基づいている。
(1) 局所性:遠隔作用の否定で、私たちがある場所で行なうことは離れた場所の対象に「瞬時に」影響を与えない。
(2) 実在性の基準:測定結果が何であるか確実に予測できるなら、その結果を引き起こした「実在の要素(element of reality)」が存在する。

 

粒子1 −−−−−<遥かに離れている>−−−−− 粒子2 
           ↑
        EPRの思考実験

 

これらの仮定から次のような論証が展開される。
(1) 粒子1の位置を測定することになるなら、私たちは粒子2の位置を正確に予測できる。だから、(仮定(2)より)粒子2は確定した位置をもつだろう。
(2) 局所性の仮定から、粒子1の位置を実際に測定するかどうかは粒子2の実在性に何の影響も与えない。だから、
(3) 粒子2は確定した位置をもち、(運動量に対する同じ論証を繰り返して)確定した運動量ももつ。
(4) それゆえ、量子力学の記述は不完全である。よって、不確定性原理は実在それ自体への制限ではなく、私たちの知識への制限である。

 ところで、なぜ局所性は重要なのか。次の二つの理由が考えられる。

(1) 遠隔作用に対する昔からの反対
(2) アインシュタインの特殊相対論に基づく新しい反対:因果的な信号は光の速度より速くは伝わらない。光より速い信号伝達は不可能である。

 EPRの論証は次の事実に注目する。崩壊が物理的に実在する過程なら、それは特殊相対論に反する。実際、これは単一の粒子についての位置の測定についてさえ正しい。この測定で空間に広がっていた何かが局所的なものに変化する。これは空間の広い領域に渡る瞬間的変化を必要とする。だから、客観的な崩壊と特殊相対論を和解させることは困難である。特殊相対論によれば、離れた出来事の時間的順序は観測者が異なれば違ってくる。このことと瞬間的な離れた崩壊を結びつけると、個々の粒子の歴史は観測者が異なれば違ってしまう。