創世記の物語:イサクの燔祭(3)

   『創世記』22章1節から19節のアブラハムとイサクの逸話を新共同訳で見てみよう。

22:1 これらのことの後で、神はアブラハムを試された。
神が、「アブラハムよ」と呼びかけ、彼が、「はい」と答えると、22:2 神は命じられた。「あなたの息子、あなたの愛する独り子イサクを連れて、モリヤの地に行きなさい。わたしが命じる山の一つに登り、彼を焼き尽くす献げ物としてささげなさい。」
 22:3 次の朝早く、アブラハムはろばに鞍を置き、献げ物に用いる薪を割り、二人の若者と息子イサクを連れ、神の命じられた所に向かって行った。
 22:4 三日目になって、アブラハムが目を凝らすと、遠くにその場所が見えたので、22:5 アブラハムは若者に言った。
 「お前たちは、ろばと一緒にここで待っていなさい。わたしと息子はあそこへ行って、礼拝をして、また戻ってくる。」 22:6 アブラハムは、焼き尽くす献げ物に用いる薪を取って、息子イサクに背負わせ、自分は火と刃物を手に持った。二人は一緒に歩いて行った。
 22:7 イサクは父アブラハムに、「わたしのお父さん」と呼びかけた。彼が、「ここにいる。わたしの子よ」と答えると、イサクは言った。
「火と薪はここにありますが、焼き尽くす献げ物にする小羊はどこにいるのですか。」
 22:8 アブラハムは答えた。
「わたしの子よ、焼き尽くす献げ物の小羊はきっと神が備えてくださる。」二人は一緒に歩いて行った。
 22:9 神が命じられた場所に着くと、アブラハムはそこに祭壇を築き、薪を並べ、息子イサクを縛って祭壇の薪の上に載せた。22:10 そしてアブラハムは、手を伸ばして刃物を取り、息子を屠ろうとした。
 22:11 そのとき、天から主の御使いが、「アブラハムアブラハム」と呼びかけた。彼が、「はい」と答えると、22:12 神の御使いは言った。
 「その子に手を下すな。何もしてはならない。あなたが神を畏れる者であることが、今、分かったからだ。あなたは、自分の独り子である息子すら、わたしにささげることを惜しまなかった。」
 22:13 アブラハムは目を凝らして見回した。すると、後ろの木の茂みに一匹の雄羊が角をとられていた。アブラハムは行ってその雄羊を捕まえ、息子の代わりに焼き尽くす献げ物としてささげた。
 22:14 アブラハムはその場所をヤーウェ・イルエ(主は備えてくださる)と名付けた。そこで、人々は今日でも「主の山に、備えあり(イエラエ)」と言っている。
 22:15 主の御使いは、再び天からアブラハムに呼びかけた。22:16 御使いは言った。
 「わたしは自らにかけて誓う、と主は言われる。あなたがこの事を行い、自分の独り子である息子すら惜しまなかったので、22:17 あなたを豊かに祝福し、あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。あなたの子孫は敵の城門を勝ち取る。22:18 地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」
 22:19 アブラハムは若者のいるところへ戻り、共にベエル・シェバへ向かった。アブラハムはベエル・シェバに住んだ。

1節から14節及び19節と15節から18節までの文体が(原文では)異なっていて、研究者の間では、15節から18節は後に加えられたようです。中澤治樹訳では、15節から18節が省かれています。その中澤訳。

 22:1それからしばらくののち、神はアブラハムを試みて言った。
 「アブラハムよ」
「はい」と彼が答えると、22:2 神は言った。
「おまえの息子、おまえがかわいがっているひとり子イサクを連れて、モリヤの地に行け。その地の、わたしが示す山の上で、彼を燔祭(の犠牲)としてささげよ」
 22:3 アブラハムは翌朝早く起きて、ろばに鞍を置いた。そして、燔祭の薪を割り、二人の若い者と息子イサクを連れ、神に示された所をさして旅立った。
 22:4 三日目になって、アブラハムが目をあげると、はるかむこうにその所が見えた。22:5そこでアブラハムは若い者に言った。
 「おまえたちは、ろばといっしょにここで待っておれ。わしとせがれは、あそこまで行って礼拝をし、またここにもどってくるから」
 22:6こう言ってアブラハムは燔祭焼の薪を取り、それを息子イサクの背に負わせた。自分は手に火打ち石火と刃物を持ち、父子はいっしょに歩いていった。
 22:7 イサクはアブラハムに言った。
「お父さん」。
「なんだね、おまえ」とアブラハムが答えた。
 イサクがたずねた。
「ねえ、火打ち石と薪はここにあるけど、燔祭の羊はどこにあるの」
 22:8 「燔祭の羊は、神さまがちゃんと用意してくださるよ、おまえ」とアブラハムは答えた。そして、二人はなおいっしょに歩いていった。
 22:9 やがて、神に示された所に着いた。アブラハムはそこに祭壇を築いた。それから、薪を並べ、息子イサクを縛った。そして、彼を祭壇の上に横たえ、薪をまわりにおいた。22:10 アブラハムは手をのばして刃物を取り、あわや息子をほふろうとした。22:11 そのとき、天からヤハウェの使いが、彼に呼びかけて言った。
アブラハムアブラハム
「はい」と彼が答えた。
 22:12 すると天使が言った。
「その子に手をかけるな。指一本ふれてはならぬ。今こそ神を畏れるおまえの心がわかった。おまえは、自分の子、ひとり子さえ、わたしのために惜しまなかったのだから」
 22:13 アブラハムがふと眼をあげると、なんと一匹の雄羊が木の茂みに角をひっかけているではないか。さっそく行って彼はその雄羊をとらえ、息子のかわりにそれを燔祭(の犠牲)としてささげた。22:14そしてアブラハムは、その所の名をヤハウェ・イルエ呼んだ。〔それゆえ今日でも「この山でヤハウェ現わる」と言う。〕
 22:19 やがて、アブラハムは若い者たちの待っている所にもどって、ともにベエルシバに向かった。アブラハムはベエルシバに住んだ。