古典力学ができあがるまで:ケプラー、ガリレオ、ニュートン

1新しい天文学と実験科学
ケプラー(1571-1630)の3法則

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  テイコ・ブラーエ(1546-1601)は占星家として、天体の運行表を正確にするという目的から、16年にも及ぶ精密な遊星(惑星)観測を行っていた。テイコの結果を引き継いだ助手のケプラーは火星の奇妙な運動に興味をもち、その詳しい分析の中から火星の軌道面と地球の軌道面の間の角度を決定し、交叉線上に太陽がくること、太陽は火星の軌道面上にあると同時に地球の軌道面上にあり、太陽は火星と地球の両方に共通する運動の中心であることを確かめた。このことから第1法則「遊星は楕円軌道を描き、太陽はその1焦点にある」と、第2法則「遊星と太陽を結ぶ直線は、等時間に等面積を描く」を見出し、『新天文学』に発表(1609)した。さらに、8年後に第3法則「任意の2遊星が太陽の周囲を回転する周期の2乗は、太陽からそれらの遊星への平均距離の3乗に比例する」を『世界の調和』に発表(1619)した。
 古い時代の哲学者の自然観が多くの観察を根拠とするのではなく、むしろ思弁に導かれた神秘主義的色彩が強かったのに対し、ケプラーは正確な観察事実に拠りつつ厳密な数学的推論をもちいて3法則の発見に至った。彼は「観察事実に拠りどころを求めて法則を追求する」ことを実践したのである。
ガリレオ(1564-1642)落体の法則 『新科学対話』

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 ガリレオは19才のとき振子の等時性を発見したといわれ、パドア大学に移って落体運動の研究を始めた。彼はアリストテレスの「同じ高さから物を落とすとき、重い物は軽い物より早く着地する」に対し「重い物と軽い物を連結すればどうなるか」という疑問を持った。アリストテレスに従えば、いづれよりも重いからいづれよりも早くなければならない。他方で、一部は早く落下しようとしても他方は遅く落下しようとするから、その中間で落下する以外ではありえない。これは矛盾。だから、すべての物体の落下の仕方は重さには関係がないと推論し、これを「実験」で追求しようとした(1604頃)。
 ガリレオは直接的に材質の異なる球を落下させて実験してみたが、より精密には斜面の実験によって、金属球が斜面を転がり落ちるとき、球が静止状態から出発するとき、その走行距離が時間の2乗に比例して延びてゆくことを発見した。彼は斜面を垂直にした場合においても現象は同じ筈だと考え、物体の重さに関係のない自由落下における等加速度運動の概念に到達した。彼は水平におかれた平板上の球は最初に弾かれたとすれば、その後はその速さを維持すると推論し、減速の原因がない限り物体は永久に運動し続けるという、ある種の「慣性の法則」を主張している(ニュートンの直線運動としての慣性の法則ではなく、彼の場合は円運動でのものである)。
 ガリレオの物理学への功績は単に自然を観察するだけでなく、人間の側から積極的に自然に介入することによって得られる「実験的事実」にもとづいて自然の法則を認識することの重要さである。

2ニュートンの力学

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 ニュートン(1643-1727)の『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』は3巻からなっている。第1巻と第2巻は「物体の運動について」という題のものであり、第3巻は「世界体系について」となっている。ニュートンは彼の著書をユークリッドの「原論」にならって構成した。つまり、いくつかの定義から出発し、つぎに基本的な法則、いわゆる「運動の3法則」を掲げ、これを公理としていろんな定理を導き出した。彼は「万有引力」の法則を先の運動の3法則に加えることによって、ケプラーの見いだした惑星の運行についての現象論的な3法則を数学的に導くことが出来た。
 また、ニュートンは「物質量(質量)とは物質の密度と大きさ(体積)をかけてえられる物質の測度である。この量は個々の物体の重量としても知られている。…、私は極めて精密にしつらえた振子の実験によって物質量が重量に比例することを見いだしたからである。(重力質量と慣性質量)」と述べている。
運動の3法則
法則1 すべての物体は、その静止の状態を、あるいは直線上の一様な運動の状態を、外力によってその状態をかえられない限り、そのままつづける。
法則2 運動の変化は、及ぼされる起動力に比例し、その力の及ぼされる方向に行われる。
法則3 作用に対し反作用は常に逆向きで相等しいこと。あるいは、2物体相互の作用は常に相等しく逆向きであること。
運動の変化とは運動量の変化のこと、すなわち運動量の時間微分
運動量とは速度×質量で定義されるものである。
性質のわかった力のもとでの物体の運動は、その初期条件を与えることによって一意的に決定され、逆に運動を決定するには初期条件を与えねばならぬ。(運動の可逆性)
ニュートンは地球上の重力と天体の運動を決定する力とは同じものであることを発見した。(万有引力
万有引力:二つの物体の間にはたらく引力で、その大きさは両物体の質量に比例し、その間の距離の2乗に逆比例する。
 ニュートン力学アリストテレスの時間・空間の一様性の概念を変えるものではない。また質量についてはデモクリトス流の原子論を基礎とし、その不変性を前提としている。