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彼岸の頃

 煩悩と迷いの「此岸」世界にいる人が「六波羅蜜」の修行をして「悟りの世界」、すなわち「彼岸」に到達できると大乗仏教は説きます。特に、春分の日秋分の日をはさんだ前後3日の計7日間を「彼岸」と呼び、この間に仏様の供養をすると極楽浄土へ行くことができると言うのです。
 「菩薩」は悟りを開こうと思えばできる境地にまで達しているのですが、苦海に沈む衆生を救いたいという利他の慈悲心から敢えて悟りを開かず、断念します。大乗仏教では、彼岸(=涅槃)に到るためには、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智恵という6種の六波羅密を無限の時間にわたって実践し、徳を積むことが求められます。普通の人間は、無限の時間にわたって六波羅蜜を実践し、徳を積むことはできません。六波羅蜜の実践のためには、利己心を捨て、衆生(他人)のために自己を捧げ尽くすという、超人的な「自己犠牲」と「利他行」が要求され、それを実践するのが菩薩です。菩薩は不可能に近い完全無欠な理想を追い求めるあまり、悟ることまで放棄することになります。理想的な倫理徳目を実践することは悟りとは独立したことなのです。わかりやすい教えでなければ大衆に理解されず、大衆を救うことができません。その点で「南無阿弥陀仏」を一心に唱えれば救われるとした法然親鸞、一遍の浄土系仏教大乗仏教が行き着いたゴールの一つと言えます。
 菩薩中心の思想を主張するのが大乗仏教。多くの菩薩が生み出されます。名の知れた菩薩として観世音菩薩、文殊菩薩普賢菩薩勢至菩薩地蔵菩薩虚空蔵菩薩などが挙げられます。このうち観世音菩薩は「観音さま」として今でも親しまれる菩薩。法華経や般若心経に出てくる菩薩は過去に実在した歴史上の人物ではなく、想像によって創作されたものです。国宝の仏像131の内、如来像が26、菩薩像は38、圧倒的に菩薩像が多いことからも、菩薩が大乗仏教の主役ということがわかります。

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奈良・薬師寺 聖観世音菩薩像

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京都・広隆寺 弥勒菩薩

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奈良・東大寺 日光、月光菩薩

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長浜・向源寺 十一面観世音菩薩像

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奈良・法隆寺夢殿 観世音菩薩(救世観音)像