「生と死とは何か」

 誰もが尋ねたい問いだが、誰もがその答えを知らない。答えの候補はこれまで山ほど出され、その中には私たちを満足させるものも幾つかあった。神を持ち出し、神に私たちの生死を委ね、左右させるシナリオが宗教を生み出した。それが多くの人間を魅了し、長年虜にしてきた。だが、21世紀の現在、宗教的な生死の解釈に納得しない人が増え、宗教とは独立に「生と死とは何か」に答える必要が出てきている。特に、子供たちにどのように生や死を教えたらよいのか。宗教、伝説、神話によって死を解釈するのではなく、現在の穏当で信頼できる(科学的な)知識に基づいて生や死を理解しようとすれば、どのような話になるのだろうか。その話のエッセンスは「生を知るとは死を知ること、そして死を知るとは生を知ること」であり、中味が「生と死とは何か」への解答そのもの。
 そのような代表例がレオ・バスカーリア(Leo Buscaglia、1924-1998)の絵本『葉っぱのフレディ-いのちの歌-』である。易しい英語で単純な内容、誰にもわかる生死の話になっている。

The Fall of Freddie the Leaf(The title has changed from The Fall of Freddie the Leaf to Life and Nature since the 2012 edition of the New Horizon books.)

Spring came. Freddie, the leaf, was born on a branch of a tall tree.
Hundreds of leaves were born on the tree. They were all friends. Together they danced in the breeze and played in the sun.
Daniel was the largest leaf and Freddie's best friend. He knew many things. He explained that they were part of a tree in a park. He also explained about the birds, the sun, and the moon.
Freddie loved being a leaf. Summer was especially nice. Many people came to the park.
"Let's get together and give them some shade," said Daniel. "Giving shade is part of our purpose in life. Making people happy is a good reason for living."
Old people sat under the tree and talked of old times. Children ran around and laughed. It was fun to watch those children.
Summer passed and fall came.
Soon the leaves changed their colors. Some turned red and others turned yellow. Freddie turned purple. They were all very beautiful.
One day a strange thing happened. Some of the leaves were blown off by a strong cold wind. The leaves became frightened. "What's happening?" they said.
"It's the time for leaves to change their home," Daniel said. "Some people call it dying."
"Will we all die?" Freddie asked.
"Yes," Daniel answered, "Everything dies."
"I won't die!" said Freddie.
But his friends started to fall one after another. Soon the tree was almost bare.
"I'm afraid of dying," Freddie told Daniel.
"We're all afraid of things we don't know," Daniel said. "But you were not afraid when spring became summer, or when summer became fall. Changes are natural."
"Will we return in spring?" Freddie asked.
"I don't know, but Life will. Life lasts forever, and we're a part of it," answered Daniel.
"We only fall and die. Why are we here?" Freddie asked again.
Daniel said, "For the friends, the sun, and the shade. Remember the breeze, the people, and the colors in fall. Isn't that enough?"
That afternoon, Daniel fell with a smile. Freddie was the only leaf left on his branch.
The first snow fell the next morning.
The wind came and took Freddie from his branch. It did not hurt at all.
As he fell, he saw the whole tree for the first time. He remembered Daniel's words, "Life lasts forever."
Freddie landed on the soft snow. He closed his eyes and went to sleep.
He did not know this. But, in the tree and the ground, there were already plans for new leaves in spring.

春がきました。葉っぱのフレディは高い木の枝で生まれました。
その木には何百という葉っぱが生まれていました。みんな友達でした。いっしょになって、そよ風の中で踊ったり、太陽を浴びながら遊んだりしました。
ダニエルはいちばん大きな葉っぱで、フレディの親友でした。ダニエルはたくさんのことを知っていました。彼は自分たちが公園の木の一部分であることを説明してくれました。それからまた、鳥とか、太陽や月とかについても教えてくれました。
フレディは自分が葉っぱであることが好きでした。夏は特にすてきでした。おおぜいの人が公園にやって来ました。
「みんな集まって木陰を作ってあげよう。」とダニエルが言いました。「木陰を作るのはぼくたちの人生の目的の1つでもあるんだ。人々を幸せにしてあげるのは、ぼくたちが生きていることのよい理由になるからね。」
老人たちは木の下に腰かけて、昔のことを話り合いました。子どもたちは走りまわって笑いました。そういう子どもたちを眺めるのは楽しいことでした。
夏が去って、秋がきました。
まもなく、葉っぱたちは色を変え始めました。あるものは赤くなり、ほかのものは黄色になりました。フレディは紫になりました。みなとても美しくなりました。
ある日、不思議なことが起きこりました。葉っぱの何人かが、強い冷たい風に吹き飛ばされてしまったのです。葉っぱたちはこわがりました。「何が起こっているんだ?」と彼らは言いました。
「葉っぱが住家を変えるときがきたんだ。」とダニエルが言いました。「それを死ぬことだと言う人もいる。」
「ぼくたちみんな死んじゃうの?」とフレディはたずねました。
「そうだよ。」とダニエルは答えました。「すべてのものは死ぬんだ。」
「ぼくは死なないよ!」とフレディは言いました。
でも、彼の友達は次々と落ちてゆきました。やがて、その木は葉っぱがなくはだか同然となりました。
「ぼくたちはみんな知らないことがこわいものなんだ。」とダニエルは言いました。「でも、きみは春が夏になっても、夏が秋になっても、こわがらなかったじゃないか。変化というものは自然なものなんだよ。」
「ぼくたち春には戻ってくるのかな?」とフレディはききました。
「わからないよ、でも 『命』 は戻るよ。 『命』は永遠に続くからね。そして、ぼくたちはその一部なんだよ」 とダニエルは答えました。
「ぼくたちは落ちて死ぬだけなんだ。それじゃなぜここに生まれたの?」 とフレディがまたききました。
ダニエルは言いました。「友達や、太陽や木陰のためだよ。覚えているだろう、あのそよ風や、人々や、秋の色を? それだけでいいじゃないか?」
その日の午後、ダニエルはにっこりと笑って落ちてゆきました。フレディだけが枝の上に取り残されてしまいました。
翌朝には初雪が降りました。
風が吹いてきて、フレディを枝から連れていってしまいました。全然痛くありませんでした。
落ちながら、フレディは初めて木の全体を見ました。「『命』 は永遠に続く」 というダニエルのことばを思い出しました。
フレディはやわらかい雪の上に落ちました。彼は目を閉じて、眠りにつきました。
彼は知らないことだったのですが、木の中にも地中にも、もう春の新しい葉っぱのための準備ができあがっていたのです。

 さて、主人公は葉っぱのフレディ。春に太い枝に生まれ、夏には見事に成長。フレディには仲間の葉っぱがたくさんいる。フレディは、みんな自分と同じ形をしていると思っていたが、実は皆違っていることに気づく。人間と同じように、どんな生き物にもそれぞれ個性がある。
 フレディの親友はダニエル。ダニエルはいちばん大きな葉っぱで、考えることが大好きな物知り。哲学者ダニエルはフレディにいろんなことを教えてくれる。フレディが葉っぱだということ、地面の下に根を張っているから木が倒れないこと、月や太陽や星が秩序正しく運動していること、季節がめぐること…自然の法則から、暑い時には葉っぱ同士で木かげを作ると人間が喜ぶこと、そしてそれも葉っぱの仕事であること等々。
 フレディは自分が葉っぱに生まれたことを喜ぶ。季節は移り、寒い霜の季節が訪れる。緑色だった葉っぱは紅葉する。仲間たちもそれぞれ、違う色に変化。同じ木の葉っぱであるにもかかわらず、全部が違う色に変化する。訝るフレディに、ダニエルは生まれたときは同じ色でも、皆違うな経験をするから、違う色に変化することを教える。
 そして冬の到来とともに、葉っぱたちは冷たい風に吹き飛ばされ、つぎつぎと落葉。おびえる葉っぱたち。ダニエルはみんなが今の木から「引っ越す」ことをフレディに教える。やがてフレディとダニエルだけが木に残る。フレディはダニエルが言っていた「引っ越す」ということが「死ぬ」ことを意味するのだと気づく。
 「死」を恐れるフレディに対して、ダニエルは、「無常」を説き、死も逃れえぬ変化の一つであることを教える。「ぼくは生まれてきてよかったのだろうか」と尋ねるフレディに、ダニエルは深くうなずき、やがて夕暮れに枝から離れていく。
 ひとりぼっちになってしまったフレディは、雪の朝、風にのって枝を離れ、しばらく空中を舞ったあと、地面に舞い降りていく。初めて木全体の姿を目にしたフレディはダニエルが言っていたい「生命」の永遠を思い出す。そして静かに目を閉じ、ねむりに入っていく。そして、季節は巡り、また春がやってくる。