読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

頭の体操

次の例は、シンプソンのパラドクスと呼ばれている統計的な誤謬です。カリフォルニア大学で行なわれた入学試験で男女差別の疑いがもたれたことがあります。男女同数の受験者に対して、合格者全体を比べると男のほうが女より多かったのです。これは男女差別ではないかという疑いがかかり、裁判沙汰に及びました。大学当局が学部ごとに調べ直してみると、二つの学部はいずれも男女の合格者数に関して全く公平であることがわかり、差別がないことが判明しました。(下の表はこれをわかりやすくしたもので、実際の学部や学生数ではありません。)

       学部1       学部2       総計
応募者  90女;10男    10女;90男    100女;100男
合格率    30%       60%
合格者  27女;3男     6女;54男     33女;57男

この表は簡単な数に直してありますが、総計を見ていただきたい。確かに男女の応募者数は同数でありながら、合格者数には差があります。しかし、学部ごとの応募者と合格者はどうでしょうか。学部1も学部2も共に応募者の男女比に合った合格者を出しています。つまり、各学部は男女差別を配慮した上で合格者を出したのですが、応募者数の違いのために総計ではあたかも男女差別があったかのような結果になったのです。総計は各部分の性質を正しく反映してくれません。このような誤謬の原因は論理的なものではなく、統計の初歩の認識にあります。しかし、それを適切に指摘し、正しい姿を浮き彫りにするシナリオは論理的な構成なしにはできません。論理的な規則は道具であり、その道具は正しく使ってこそ役立つのです。論理的に正しい推論はその適用される状況に正しく適合してこそ、適切な内容をもつ正しい推論として認められるのです。

次の各問に答えることによって頭の体操をしてみてください。(問1)と(問2)は簡単ですが、(問3)はちょっと頭を使い、(問4)は「識別できるかどうかが確率の値を変える」という刺激的な言明の具体例になります。

(問1)「奇数に奇数を加えると偶数になる」という文と総計の誤謬を比較し、共通点を挙げなさい。
(問2)「クラスAは性質Cをもち、クラスBも性質Cをもつので、クラスABは性質Cをもつ」という言明が正しくないことをシンプソンのパラドクスを反例に使って証明しなさい。

(問3)偶数+偶数は偶数、奇数+奇数は偶数、偶数+奇数は奇数となり、答えが偶数になる割合が奇数の2倍なのに、偶数と奇数が同数あるのはどうしてか。
(問4)二つの箱ABに粒子1、2が入る組み合わせを挙げ、それぞれの組み合わせの確率を求めなさい。さらに、箱が区別つかない場合、粒子が区別つかない場合、箱も粒子も区別つかない場合について、それぞれの確率を求めなさい。

*脳に筋肉はありませんが、頭はそれでも柔軟に鍛えることができます。