ダーウィンと表情

 ダーウィンの父方の祖父は高名な医師エラズマス・ダーウィン、母方の祖父はイギリス最大の陶器メーカージョサイア・ウェッジウッドでした。
 ダーウィンは進化論を提唱しましたが、それだけでなく近代心理学を形成した影の立役者で、「人及び動物の表情について(The Expression of the Emotions in Man and Animals)」(1872)で、人間と動物との表情の類似から,表情がもつ実用的な機能について述べています。この頃の比較心理学といえば、ダーウィンの友人である比較解剖学者ロマーニズの研究が有名ですが、逸話の拡大解釈という批判も受けていました。ロイド・モーガンは、ある行動を説明するときに試行錯誤などの低次の心的過程として説明できる場合には,高次の心的過程(推論などの思考)で説明すべきではないという節約の公準を提唱しましたが,ロマーニズの研究はその批判の対象になりました。
 ダーウィンは,自分の子どもウィリアムの観察日誌をつけていて,後に「乳児の日記的素描」をMind誌第2巻(第7号)に発表しました(1877)。Mindは経験主義者ベインによって1876年に心理学と哲学の評論誌として創刊されました。ダーウィンMind第6号に掲載されたフランスの哲学者テーヌの論文に触発され、37年前につけていた日誌を読み返して書いたと述べています。論文に記された内容は生後7日間の反射行動の記述から、2歳における道徳観の表れまで、論文の最後はダーウィン独特の結論になっています。つまり、この論文の最後の話題は,言語の理解であり,初語が出るはるか前に言語理解が可能であることを述べたダーウィンは、「下等動物たちが人間から話しかけられる言葉を理解できることを考えれば,これは予想できることである」と結論しています。

A Biographical Sketch of an Infant
Charles Darwin (1877), First published in Mind, 2, 285-294.

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