黒いチューリップ

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 チューリップは新潟、富山の県花で、これからがその季節。あちこちで様々な色の花が咲き始めている。バラと並んで人気があり、そのためか公園や遊歩道の植え込みによく使われている。

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 チューリップと言えば、アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『黒いチューリップ』(La Tulipe noire)(1850)、それを原作にしたアラン・ドロン主演の『黒いチューリップ』が思い浮かぶ。小説は、17世紀オランダで起きたチューリップ・バブルと、デ・ウィット兄弟の惨殺事件を題材に、多額の賞金が懸かった黒いチューリップを巡る陰謀と、その品種開発に情熱を燃やしながら、デ・ウィット兄弟の係累として投獄された青年と牢番の娘の愛を描く。映画は、貴族を罰し庶民を助ける神出鬼没の快盗「黒いチューリップ」の活躍を描いた娯楽アクション。顔に傷を追った「黒いチューリップ」と、その身代りのために奮闘する双子の弟をアラン・ドロンが二役で演じる。史実、デュマの小説、映画の共通の実在した人物は、デ・ウィット兄弟。オランダの「貪欲なフローラ(花の女神フローラ)に貢ぐ愚か者たち」といわれた、チューリップ・バブルの暴落と混乱を織り交ぜながらの筋書き。

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 黒色は光の三原色(赤、緑、青)全てを吸収した色(全て反射すると白色)。黒い花は、この光を反射する性質が何らかの理由により欠落したもの。昆虫などにアピールして受粉に役立てるため、花は様々な色をもつが、黒い花がないのはなぜか。鮮やかな色の方が、虫や鳥をおびき寄せやすいため、黒の色素が光合成により分解されるためなどが考えられるが、正解はそもそも黒の色素が含まれないため。花の色素のもとになるのはアントシアン・カロテン・フラボノイドなどで、それらが組み合わされて色がつくられている。アントシアンは、赤、青や紫色のもとになり、カロテンは、黄色、だいだい色のもとになり、フラボノイドは、うすい黄色のもとになる。これら三つの色素がまざりあって色々な花の色になる。花は、虫やチョウに花粉を運んでもらわないと種子ができないので、虫がよってくることが不可欠。ところが、黒は、虫やチョウには見えない色。

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 真の黒色の花はないのだが、黒く見える花はある。その例がバラ。もともと青い色素を持っていないバラを、遺伝子操作によって作り出した「青いバラ」は有名だが、この「黒いバラ」は遺伝子操作で作り出されたものではない。トルコのハルフェティ南東部にのみ生息していて、自生している自然の花である。黒くなる要因は、ユーフラテス川流域特有の土壌と気候による。

 結婚式の引き出物の真っ黒な袋、黒を使ったスイーツや家電は最近では珍しくない。黒い飛行機やトイレットペーパー、マスクなどが登場。黒を上手に使いこなすには、黒がなぜ黒に見えるのかを知っておくべきだろう。黒はなぜ黒いのかというと、その物体が全ての光を反射しないで吸収してしまっているから。つまり、ほとんどの色が光の反射によってもたらされているのに対し、黒という色は光を反射しない特殊な色。自然界では本来真っ黒い生き物は存在しない。一見真っ黒に見えるカラスの羽もよく見ると漆黒の黒ではない。黒い花を持つ植物も大抵は濃い紫だったり、茶色だったりと完全な黒ではないことは既述の通りである。太陽の光を必要とする生き物は、必要な光を効果的に取り入れるために真っ黒は身に着けない。だから、本当に光を通さない黒を着るのは私たちだけ。
 黒がもたらす効果は、見た目の高級感や重厚感。他にも実際の見た目より小さく見せるという効果もある。だから、囲碁の白石と黒石の大きさは違う。膨張色である白石と収縮色である黒石を同じ大きさにしてしまうと、白い石の方が大きく見えてしまうため、バランスをとるために黒の石が少し大きくしてある。
 喪服以外に黒い服を持っていない人など今はいないだろう。黒を着ると気持ちが落ち着き、外からの様々な刺激から鎧のように守ってくれる働きがあるような気さえする。色の刺激が受け入れがたいような時は、全てを吸収し、受け止めてくれる黒が心地よく感じられる。黒が好まれる現在、黒がおしゃれだという理由以外に、現代の複雑な心理状況が自然と黒を求めているのかも知れない。