高村光太郎 新緑の頃

青葉若葉に野山のかげろふ時、
ああ植物は清いと思ふ。
植物はもう一度少年となり少女となり
五月六月の日本列島は隅から隅まで
濡れて出たやうな緑のお祭。
たとへば楓の梢を見ても
うぶな、こまかな仕掛に満ちる。
小さな葉っぱは世にも叮寧に畳まれて
もつと小さな芽からぱらりと出る。
それがほどけて手をひらく。
晴れれば輝き、降ればにじみ、
人なつこく風にそよいで、
ああ植物は清いと思ふ。
さういふところへ昔ながらの燕が飛び
夜は地蟲の声さへひびく。
天然は実にふるい行状で
かうもあざやかな意匠をつくる。

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