大学設置審議会:文部科学省の砦

  新たな大学、学部や大学院を新設する場合、それが妥当かどうかを審議するのが大学設置審議会。大学、学部や大学院をつくるには文部科学大臣に申請し、大臣の諮問機関である大学設置・学校法人審議会で審議され、認可を受けなければならない。

 大学設置審議会は「大学設置分科会」と「学校法人分科会」の二つに分かれている。大学設置分科会では設置しようとする大学や学部に関して、その設立趣旨や教育理念カリキュラムや教員の人数、さらに校舎や教育設備などについて学校教育法に基づいて審議される。一方、学校法人分科会では私立学校法及び私立学校振興助成法により、設立団体の財政状態や管理運営などについて審議される。審議委員は文部科学大臣によって任命されるが、学識経験者や学校法人の理事など教育に精通している人たちが選ばれ、任期は2年で再任も可能である。

 かつて私も大学設置分科会の専門委員会で審査したことがある。申請書類が大学ごとにまとめられ、事前に何が問題かなどが見事に列挙されているので、(書類内容を信頼した上で)それら問題について議論し、審査に専念できた。書類のまとめは役人が、それについての議論は専門委員が行うことになっていた。新しい大学、学部を作るためには、最初にその学部などを作るための準備、さらに申請してからの審議と、認可までに非常に多くの労力と時間が必要である。私が審査したのは学部の新設までだった。では、なぜこのように厳格な審査を行う必要があるのか?

 日本では少子高齢化が進行していき、大学や学部が増加してしまえばそれぞれの学校法人などの経営破たん、あるいはその学部の卒業生が仕事に就けないという事態になりかねない。だから、現在の日本の置かれている状況を考慮し、本当に必要なものなのかどうかの十分な吟味が必要とされている。また、これらの教育機関には多額の補助金が支給されており、これらの補助金の適切な使われ方をチェックする必要もある。

 大学設置審議会の審査は、日本の大学教育の未来を左右するものであり、高等教育行政の根幹。学部の新設の場合、設置審議会は大学側の申請を受けて(開設の前々年度3月末まで)、4~5月ごろに「学生が確保できるか」、「教員の質や数は適正か」、「財政的に問題ないか」などを書類審査、6月ごろに校舎やキャンパスの整備状況などの実地審査を行う。審議会は8月までに審査の結果を答申し、文科大臣は認可か不認可かを判断する。

 加計学園の場合、すでに大学側から申請が出され、設置審議会は上記のスケジュールに従って審査を進めている。今月には愛媛県今治市の学部設置予定地に専門の委員らが赴いて、実地審査を行う予定という。加計学園獣医学部の定員は160人だが、これは何と国内最多で、現在の国公立大に比べて数倍の規模。獣医学部は全国で教員不足と言われており、加計学園が教員の質と数を適正に確保できるのか、疑問視する関係者が多い。

 大学設置審議会の獣医学専門委員会の委員数は8名で、女性が4名。いずれも大学の獣医学関係の教授。獣医師の需給を巡っては、日本獣医師会は「不足していない」との立場で、文部省(当時)も1984年、獣医師の過剰を防ぎ質を確保するとして新設や定員増を認めない方針を決定。家畜を診る産業動物獣医師は減少するとの見通しもあるが、獣医学部は北里大が1966年に青森県に開学したのを最後に新設されていない。だから、審議会のどの専門委員も新設学部の審査をしたことがないのである。今治市での新設の申請も2007年以降退けられてきたが、規制が緩和される国家戦略特区の指定を受けたことで開学に向けて動いている。国家戦略特区は、医療、雇用、農業などの分野で、既得権益に守られた「岩盤規制」を地域限定で緩和するしくみである。「規制の緩和」によって、加計学園獣医学部新設の申請が受理され、大学設置審議会で審議されている。この「規制の緩和」は「学部の設置基準の緩和」も含むものかどうか、(実際には無理だろうが)審査経緯を含め、知りたいものである。

 なお、獣医師数や今治市の「特区提案」についての日本獣医師会の考えはそのホームページに文書で掲載されている。蛇足ながら、獣医学部の偏差値は大変高く、すべてが65以上である。