育児と通信生

 今年もまた『ふれあい』が送られてきた。慶應母親学生会の会誌である。保育と学習の二足の草鞋を履きながら頑張るお母さん通信生の苦労が行間に溢れている。かつて私はシリーズで大学通信教育について書いていた。それを思い出し、読み直したら、何とこの会を紹介していた。そこで、以下に再録し、今年も始まろうとしている夏のスクーリングに参加する通信生たちの健闘を祈りたい。

 

大学通信教育:通信生の組織(7)

 通信生は孤独、というのが通り相場だが、そのためか仲間意識が意外に強い。苦しい経験を共有しているからかも知れない。そんな通信生を助け、励ますのが通信生の集まり。これは大学によって違っていて、私には自分のいた大学の組織や実態しかわからない。そこで公平ではないが、自分の大学の場合を述べてみよう。

 その組織名は「慶友会」。慶友会とは、全国各地に存在する通信生が、互いの学習の助けのために自主的につくられている団体で、北は北海道から南は鹿児島、沖縄まで、現在その数は50団体以上、というのが大学側の説明。さらに、その説明を読むと、慶友会では定期的に会を開いて勉学上の情報を交換したり、講演会、研究会を行っている。会報や機関誌を発行し、ホームページを使って情報交換をしている慶友会がほとんどである。10数名のところから300名を越える慶友会まで、その規模も内容も千差万別。当然ながら年齢も18歳から80歳超まで様々である。標準的な慶友会は北海道から沖縄までの都道府県にあって、それぞれの地域の通信生が集まり、互いに助け合うことが基本だが、特定の目的のための慶友会やインターネットでむすばれた慶友会もある。

 また、慶友会には講師派遣制度なるものがある。これは各慶友会の活動地域に教員を招き、セミナー、講演会を開く制度。教員と親睦を深め、学習の機会を持つのも慶友会の存在理由で、多くの教員が派遣されてきた。私も何度か慶友会に招かれて講演を行ったことがある。土曜、日曜と二日間行われ、土曜の夜や日曜の昼は出席の学生たちと食事を共にしながら語り合うのが普通である。ここでもスクーリングの授業と同じで、真面目な通信生の姿がほとんどで、その熱意には圧倒される。当然ながら、学習の悩み、生活の悩みなど互いに語り合い、人と人の触れ合いが通信教育を通じて自然になされている。大抵土曜の夜の深酒で日曜の講義はつらいものになる。

 ここで慶友会を一つ紹介しよう。母親が集まる慶友会があり、いつも立派な会誌を出していて今でもいただく。小学生未満の子供をもつお母さんがスクーリングに出席するために大学は教室を提供し、そこで保育できるようにしている。臨時の保育所が教室にでき、保母さんに子供を預け、お母さんが授業に出席している。時々保母さんがキャンパスで子供たちを散歩させている光景が眼に入ってくる。そんなお母さんたちが慶友会をつくり、互いを助け合いながら卒業を目指している。

 通信生は必ず慶友会に入らなければならないなどということはなく、実際入っていない通信生も多い。卒論指導で直接通信生に確かめると、慶友会に入っている学生はむしろ少ない。一人で卒論を書いて卒業できる学生には慶友会は大きな意味をもっていない。彼らは慶友会の集まりに参加するより、短期間で卒業することを優先するのである。

 

*「慶應母親学生会」で検索すれば、ホームページやスクーリング時の保育などの項目が簡単に見つかる。