謎のコブシ

  ハスとスイレンは見かけは似ていても、まるで別物なのだが、コブシ(辛夷)とモクレンは、共にモクレンモクレン属の落葉広葉樹。いずれが好きかと問われると困ってしまう。どちらも優劣つけがたしで、私の中では未だに決着がついていない。コブシは早春にいち早く白い花を梢いっぱいに咲かせる。花はふつう一個の雌しべをもち、これが成熟して一個の果実となる。だが、一個の花に多数の雌しべがあると、その多数の雌しべから一個の果実ができることが多い。一つの子房に由来する果実が単果、一つの花の複数の子房に由来する果実が集合果。イチゴが集合果の代表で、コブシもその一つ。

 コブシの果実はにぎりこぶし状のデコボコがある。発生阻害としか思われないような形状で、大きさも様々である。袋菓が結合し、所々に瘤が隆起した形状。この果実のにぎりこぶしの形がコブシの名前の由来である。私たちが食べる果実は色や形が整っているものがほとんどだが、コブシの実はそれとは正反対の形で、なぜなのかとても気になる。

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 一方、花は純白で、基部は桃色を帯び、その形状は息をのむほどに美しい。枝を折ると、芳香が湧出する。アイヌはコブシを「オマウクシニ、オプケニ」と呼んだが、アイヌの言葉で「良い匂いを出す木、放屁する木」という意味だそうである。

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 コブシの集合果はその異様な形状だけでなく、種子も不思議な様態を示す。成熟して袋果が裂開すると赤い種子が白い糸でぶら下がるのである。これまた好奇心を掻き立てるが、その謎解きは次の機会にしよう。