点から線からつくれるか、また、線を分割していくと点になるか。

 (これは大人向きではなく、中学生向きの問いです。)

 算数と数学はどこが違うのでしょうか。小学校で教わるのが算数、中学校では数学というのが一般的な答えでしょう。算数と数学という呼称の歴史を辿れば、それだけで興味深い数学史が描けます。誰にも自然数、整数、分数、小数からなる世界と、実数が登場し、連続的な関数からなる世界とは根本的に違っていると教室で直感した記憶があるのではないでしょうか。

 実数はとてもパワフルで、神秘的な数です。なにしろ、実数は連続(完備)しています(後述の*を参照して下さい)。離散的(とびとびに)に並ぶ自然数有理数とは違って、点としての実数が隙間のなし仕方で連続的に並び、スムーズな線からなる線分をつくることができるのです。

 では、タイトルの二つの問いについて解答してみましょう。

 

解答1

 点には部分がない。だから、点にはサイズがない。サイズのない点をいくら並べてもサイズが生まれる筈がない。点からスタートする限り、サイズが生まれる原因や理由がどこにも見当たらない。だから、「延長(サイズ)のないものから延長は生じない」、「何ものも理由なしに存在しない」といった形而上学的な原理に従って、二つの問いについての解答はNoである。

 

解答2

 実数の区間[0,1]が0と1の間にある個々の点からできているように、実数の集合は個々の実数を要素としている。点から線ができ、線は点に分解できる。線は点の集合であり、点は線の要素である。平面や空間についても同様で、それゆえ、二つの問いについての解答はYesである。

 

 あなたはいずれの解答に賛成しますか。

 

*(ここからは大人向けの説明です)

 実数が連続性(continuity)をもつとは、実数が完備である(complete)ことです。実数の連続性と同値な言明は多数存在し、その中の一つに「アルキメデス性をもつ」があります。これは古代ギリシャの数学者・物理学者アルキメデスに因み、『原論』第5巻の定義4として次のように述べられています。

 

(おなじ種類の)量は互いに、何倍かすれば他方よりも大きくなるような比をもつと言われる。

 

ヒルベルトは『幾何学の基礎』でアルキメデスの公理の定式化を行い、彼の公理系の公理 V-Iとして挙げています。

 

A1を任意に選ばれた点AとBのあいだの直線上の任意の点とせよ。点A2, A3, A4, ... を、A1がAとA2の間に、A2がA1とA3の間に、A3がA2とA4の間になるように選べ。さらに、線分AA1, A1A2, A2A3, A3A4が互いに等しいとせよ。そのとき、この点列のうちで特定のAnについてBがAとAnの間に位置するようなものがある。

 

 実数はアルキメデス性をもっています。これは有理数アルキメデス性をもち、実数がその完備化として得られることからわかります。つまり、任意の完備なアルキメデス的順序体は実数の順序体に同型になるのです。