和色:例えば、紫

 人は食うことに執着する。さらに、人は火と食べ物を結びつけ、料理を始めた。それが、食うことを楽しみに変えた。味わうことを知った人は調理する術に執着し始める。これは日本人も然りで、和食は欲と快楽の結晶。そのあからさまな煩悩の極みを消化ではなく、昇華したのが色。食べる楽しみに見る楽しみを加えてさらに総合する(aufheben)。その色を見直せば、見えてくるのは和色。実際、日本人は自然の中の(特に植物の)色に執着してきた。日本独特の色は盛りだくさんで、大和時代からの色の歴史を見れば、その種類は信じられないほどに豊富である。
 流行する和食は今の日本人には身近で誇らしいものとなっているが、和色はどうか。これが意外に残っているのである。和服は少なくなったが、和色は日本人の中にしっかりと組み込まれている。というのも、私たちが育った風土のもつ色が和色であり、そのほとんどは植物の色だからである。
 例えば、紫。紫は青と赤の中間色で菫(すみれ)の色。少し前に紫の花をもつ園芸植物を紹介した。紫は虹の七色の一つで、赤や藍と共に古くからある色。高貴なものを象徴する色で、宮廷の位階の色である当色(とうじき)では上位の色。僧侶の最高位を表す紫袈裟は勅許がなければ着用できなかった。「紫式部」は、植物の紫式部の実のような、赤みがかった紫色。紫式部クマツヅラ科の低木で、紫色の小さな実が重なり合っている。その実の色がこの色名になった。よく似た紫が「京紫」で、それに対抗し、江戸っ子が武蔵野で採れる紫草でつくった青みを帯びた紫色が「江戸紫」。

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(菫)

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紫式部

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(京紫)

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(江戸紫)